Mt.FUJI

2024 Mt.FUJI 100 レポート【④レース前半編】

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自身6回目の100マイルレースとなったMt.FUJI。結果は25時間1分46秒、男子25位で完走することができました。本レースについて、①概要、②トレーニング、③準備、④レース前半、⑤レース後半、⑥振り返りの全6回の超大作で報告したいと思います。

今回は【④レース前半編】です。

レース当日 スタートまで

  • レース当日の25日に現地入り
  • なるべく安静にして体力は使わない
  • 仮眠バスツアーを活用することでストレスなくスタートラインに立てた

今回のレースは、26日午前0時スタート。前日入りも考えましたが、さすがに有給が取れず、当日の朝に現地に向かうこととしました。といっても、スタートは上述の通り真夜中のため仮眠しなければなりません。普通に公共機関を使うと、仮眠はおろか電車の乗り換え、座席取りなどで余計な体力や脳を使ってしまいます。ということでちょっと値は張りますが、大会オフィシャルの仮眠バスツアーを予約することとしました。

【ツアースケジュール】
9時 新宿西口バス発
11時 北麓公園着 受付
14時 北麓公園発 富士宮仮眠ホテルへ
15時 富士宮仮眠ホテル着 仮眠
22時15分 富士宮仮眠ホテル発
22時45分 富士山こどもの国着

これが予想以上に快適で、9時に新宿からツアーバスに乗り、途中事故渋滞に巻き込まれながらも1時間遅れの正午過ぎに受付会場の北麓公園に到着。受付を済ませてブースを一回りして14時に仮眠先の富士宮のホテルへ出発。15時にホテルへ到着し、16時前にはベッドに潜りこむことができました。21時に起きて食事と着替えを行い、22時15分にホテルを出発。23時前にスタート地点の富士山こどもの国に到着しました。荷物預け、ドロップバック預け、トイレを済ますとスタート30分前という、なんと無駄のないツアースケジュール!

補足すると、バス内では常にアイマスクと耳栓を着用し、ひたすら目をつむって身体と脳を休ませていました。音楽やラジオなど聞かず、無理に寝ようともせず、無の状態を保ちました。ホテルでの仮眠は、さすがに熟睡とは言えませんがまどろんだだけで十分です。例年焦ってしまって眠るどころかストレスになることが多々ありましたが、今回は、寝なきゃ!というプレッシャーはかけずに、目をつむればOKのような軽い気持ちが功を奏した感じです。結果的にこのツアーのおかげで万全な体調でスタートラインに立つことができました。

そしてチーム100マイルのチームメイトと、お互いの健闘を約束しつつ記念撮影をしているとあっという間に夢の時間が始まりました。

スタート - F1富士宮

  • 累積距離:25.3km (獲得標高476m)
  • 累積時間:2:26:24
  • 101位
  • 脚が軽く調子が良いため、知らぬ間にオーバーペースとなった
  • 富士宮に着くころに、左足甲に謎の違和感を発症

戦略は122kmの山中湖まで自重し、そこから勝負に出る作戦。なので、スタート直後の13km近くにわたる下り基調の林道は絶対に飛ばしてはいけないのです!絶対に。

だけど足が非常に軽くて調子が良い。気づけはキロ5分を切って心拍も150を超える始末。並走するランナーの数も例年に比較して少ないことからもペースが速いことを自覚しました。しかし、これだけ練習積んできたのだから大丈夫だろうという心の隙が生まれてしまい、セーブせずに送電線のトレイルに入りました。

トレイルに入ると周りのペースが落ちたため、ここはさすがに無理せずペースを合わせました。例年、とても長く感じるこの送電線トレイルは、体感三分の一くらいのイメージで富士宮に着きました。タイムテーブル通りの進行ができていました。ただ、気になるのが左足の甲が締め付けられるような違和感が出始めたことです。

F1 富士宮 - F2 麓

  • 累積距離:52.5km(区間距離:27.2km 獲得標高:1,705m)
  • 累積時間:6:19:34(区間時間:3:53:10)
  • IN 57位 OUT 52位(区間順位:51位)
  • 登りでペースが上がる。しかし、ロードに出るころに筋疲労を感じる
  • 左足甲の違和感が痛みに変わり、麓エイドでは一時、走るのも困難に

富士宮のエイドでは、次の天子山地に向けて、胸の2つのボトルの他、予備ボトルを持つようにしました。スタートから富士宮までで空になった1つのボトルにChallengerのドリンクミックスとtopspeed塩タブを入れて、予備ボトルに半分程度の水をいれました。そしてバナナを1本ほおばる。トイレを済まして3分ほどでエイドをアウト。イメージした通りのエイドワークでよしよしと。

エイドを出て数キロのロードで、左足の甲の違和感が痛みに変わりだしました。靴紐の締めすぎか?と思い、天子の登りでは紐を全開に緩めて少しは痛みが治まりました。

天子の登りは900mUPほど。登りには相当な自身があったため、パワーウォークでランナーを追い抜き、どんどん登っていきました。途中、近江竜之介選手の掛け声もいただきやる気も漲ります。天子ヶ岳の手前で女子有力選手の大淵選手をパス。序盤にしてはとても辛そうな足取りでした。

天子ヶ岳から熊森山までの尾根は小刻みなアップダウンが続きます。ここは試走をしていないルートなのでイマイチどの辺にいるかわかりませんでした。ただ覚えているのは、ロープを使う急登に来たら熊森山までもう少しだということ。天狗岳あたりで完全に明るくなりライトを外し、ほどなくして熊森山に到着。激下りは天候が良いのと、まだランナーが数十人ということで苦戦せずにロードに出ました。しかし、下りのロードから徐々に体が重くなる感覚と前腿に疲労感を覚え始めました。

「おいおいまだ50kmも来てないのに冗談はよしてくれよ、前腿さん!」

とブツブツ独り言。平地になると今度は足の甲が痛み出し、走るのがやっとの状態になりました。そして天子山地でパスした選手に改めてパスされる始末。

エイド手前で2つのボトルは飲み切り、予備ボトルの水は全部捨てました。このためこの区間では、都合1リットルの水分しか摂っていませんでした。のどの渇きは感じなかったものの、振り返ると脱水からくる前腿の疲労だったと思われます。予備ボトルの水は捨てずに無理してでも飲めばこの後の展開も変わっていたかもしれません。

富士山から溢れ出る様な素晴らしい朝陽は、私にはこの先の苦闘を予感させる暗雲に感じられました。

F2 麓 - F3 精進湖

  • 累積距離:70.7km(区間距離:18.2km 獲得標高:800m)
  • 累積時間:9:10:56(区間時間:2:47:35)
  • IN 61位 OUT 58位(区間順位:91位)
  • 前腿の筋疲労と、眠気でペースが上がらない
  • 竜ヶ岳の下りで、目標の24時間切りが達成できないこと悟り、棄権も考えた

麓エイドでは、私をサポートしてくれるLDA-RCのメンバーが待機してくれていました。といっても、メインサポートは私以外のランナーなので、私は予備の食料を受け取るだけ。のはずが、サポートの皆さんは手ぐすね引いて待っていてくれて体を拭いてくれたり、ゴミを捨ててくれたり、ボトルの水を入れてくれたり。まさにF1のピットイン状態。ただ、エイドで既に自分でやってしまった後だったので、うまく連携できませんでした。しっかり事前打合せを行いやってもらいたいことを伝えて甘えれば良かったと後悔。本格的なサポートに感謝しつつも最大限に生かし切れていないことを反省しました。

エイド自体は富士宮でのルーティンを3分弱でこなしてレースを再開。しかし、脚が重い!足場が悪い河原ということもありますが前腿の筋疲労で脚が重くペースが上がらない。竜ヶ岳では眠気で足がふらつきつつも、ここで下家選手をパス。とても気持ち悪そうに見える足取りはリタイアするのではないかと思いました。

人のことより自分のこと。竜ヶ岳から望む富士山、南アルプスは絶景。しかし私はラリホー。思い切って竜ヶ岳の頂上で一発目のカフェインピルを投入。激下りを終えるころに徐々に目が覚めてきました。

とはいえ想定のペースから20分近く遅れをとり、さらには前腿の疲労は痛みに変わり、回復も見込めそうにありません。この足の状態からも目標が達成できないことを自覚。目標霧散に意気消沈してしまい本栖湖のほとりを歩きながら、妻に電話し、リタイアのような弱音を吐きました。

妻からは、「折角だから楽しんだら?」という前向きなお言葉をいただきました。この言葉は、はっと自身でも俯瞰してみるきっかけとなりました。こうなったら記録狙いではなく、この本番のレースを活用して、普段はできない人体実験をしようと思い立ちました。

 ・筋疲労に陥った前腿を山中湖までに復活させる方法
 ・自身にあった適切な補給タイミング
 ・眠気との闘い
 ・エイドワークの効率化
 ・足の甲の痛み解消方法

こりゃあ、楽しくなるぞ!とさっきまでの意気消沈はどこ吹く風。精進湖エイドに入るころには前向きな姿勢になりつつありました。家族からのアドバイスもありますが、恐らく、カフェインの覚醒、興奮もそうさせたのでしょう。

F3 精進湖 - F4 北麓公園

  • 累積距離:97.4km (区間距離:26.7km 獲得標高:828m)
  • 累積時間:12:54:29 (区間時間:3:39:21)
  • IN 56位 OUT 47位(区間順位:82位)
  • カフェイン切れから襲い来る眠気と筋疲労
  • 自動販売機の活用を怠り、脱水となる

精進湖のエイドはいつものルーティン(challengerボトル飲み切り→challengerパウダー、塩タブをボトルへ投下→水入れ→ゴミ捨て→コーラ2杯飲む→バナナ食べる)とトイレを済まして4分でOUT。もっと手際よくすれば半分の時間で済ませられそうです。

ここから鳴沢氷穴のトレイルヘッドまでは登り基調のロードをひたすらに走る。約5km。ここは一歩も歩きませんでした。気温は高くなってきていましたが暑熱適応済みの私にとっては、苦にはならず涼しい感覚でした。鳴沢氷穴の道の駅で、なんとTOMOさんから応援をいただきました。ハイタッチして絶好調宣言。(本当は絶不調)言霊で自分を騙す作戦です。

しかし、鳴沢氷穴からトレイルに入ってからは、前腿の痛みから下りに苦戦するようになりました。五湖台の下りで山本諒馬選手をパス。ハンガーノックなのか足取りが重そうに見えました。年末の福山城階段練でお会いした縁もあり、少話をして先に行かせてもらいます。

トレイルから出ると勝山から北麓公園までロードを10km。ここにきて曇り空になり、瞼も再度重くなってきました。フラフラとロードを走っていると、聞き覚えのある声と少年のようなシルエット。KAIで準優勝した長田選手でした!

「先行する選手は結構つぶれているから、ここを凌げば順位を上げられるよ!」

というお言葉をいただき、なんとかスイッチを入れなおすことができました。それにしてもKAIの12時間前というのに凄い。そして、結果も出す。ダブルで凄い。尊敬しかない。

さて、ここで反省点が一つ。勝山のロードに出て脱水の感がありました。原因はchallengerが甘ったるくてなかなか飲めないこと。ただひたすらに真水やコーラが飲みたい!と思うようになりました。途中自動販売機があり「やった!」と思う反面、あと5kmくらいだし大丈夫だろうと判断し結局購入せずスルー。

しかし、ほどなくして北麓公園までの絶望の直線ロードを見上げて大後悔。完全に脱水となりこのロードをほとんど歩いてしまいました。ここでの数十秒をケチったことで、大きな後れをとることになるとは…。気になったことは後回しにせずすぐに対策する。100マイルのセオリーを忘れていました。

そんな意気消沈の中、北麓公園の手前で「小林さ~ん!」という明るい声が後ろから聞こえました。さきほど五湖台でパスした山本選手でした。どうやら復活したようで顔つきも足取りも軽く颯爽と追い抜いていきました。とても眩しいその走り。私の大好きな選手の一人でもあるのでとても嬉しかったことを記憶しています。

さて、次回は復活の後半戦です。

ABOUT ME
Ryohei Kobayashi
Ryohei Kobayashi
会社員、トレイルランナー
44歳。会社員トレイルランナー。ランニング歴25年。
トレイルランニングの魅力を発信します。
チーム100マイル、LDA-RC所属
【直近の成績】
2022 信越五岳100mile 25:05:37 14位
2023 Mt.FUJI 100mile 25:39:32 40位
2024 Mt.FUJI 100mile 25:01:46 25位
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